御贔屓大山有滝壷
「御贔屓大山有滝壷(ごひいきのおおやまありがたきつぼ)」
歌川豊国(三代)/大判錦絵三枚揃/万延元年(1860)/当サイト所蔵

この絵も以前ご紹介しました「今四天王大山帰り」と同じく、江戸の庶民の間で流行した「大山詣(おおやまもうで)」を題材にしたものです。
題名は「有難き」と「滝壺」をかけたものですね。

(市川市蔵)

(中村福助)

(河原崎権十郎)
大山詣は、江戸から近いこともあって、富士詣と並んで江戸の庶民に人気の参詣スポットでした。落語の題材にもなっていますね。
下町らしく大工や鳶、左官などの職人の参詣が多かったのだとか。図の刺青の若衆もまさにそんな感じですね。
図の真ん中の人物が持っている板のようなものは一体何でしょうか?実はこれ、木太刀(きだち)、つまり木製の太刀なんです。大山詣に行くときには、このように「奉納 大山石尊大権現 大天狗 小天狗 請願成就」と書かれた木太刀を持って行って、開運・災厄除けの祈願として納めるのが習わしだったんです。
参詣前には水垢離で身を清めたといいますから、図はまさにこれから奉納に向かうために身を清めているところでしょうか。北斎の「諸国滝廻り・相州大山ろうべんの滝」に描かれた良弁(ろうべん)の滝かもしれません。
この滝の描写がなんともすばらしいですね。鮮やかな青と白が印象的で、デザイン画っぽいものすごくシンプルな描線なんですが、それがかえって滝の勢いと荒々しさを感じさせる上手い表現になっていると思います。
手前の威勢のいい刺青若衆ともよくマッチしていますね。
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