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ゴッホの浮世絵コレクション

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日本の浮世絵の影響を受けた印象派の画家たちは、ただ影響を受けるばかりではなく、実際に浮世絵を何点もコレクションしていました。
その内容について詳しく知ることができれば、ジャポニスム研究においても大変有意義な資料となるのですが、しかし残念なことにそれらコレクションは所有者の死後、オークションで処分されるのが一般的でしたので、今日その実態について知る手がかりはほとんど残されていません。
例外的にコレクションが残されているのはモネとゴッホくらいで、しかしそのモネにしても大部分が散逸してしまっています。

ですが、ゴッホだけは有難いことに現在まで全てが完全な形で残されています。
これはひとえに彼の近親者の子孫たちの努力によって、ゴッホ作品とその浮世絵コレクションが散逸しないよう大切に守り続けられたことによるものです。
その数、実に477点。
ゴッホひとりではなく弟テオのコレクションも含めた数で、また大半が江戸後期の比較的安価なものばかりとはいえ、それでも477点という数字は驚くべきものです。
生涯に一点しか絵が売れなかった貧乏画家のゴッホが、おそらくは苦しい生活を切り詰めながら集めたであろう貴重なコレクションです。

それほどの愛情を注いで彼がコレクションした浮世絵たち。
いったいどんな内容だったのかとても気になりますよね。
実はオランダのゴッホ美術館が発行する図録にはそれら全作品が収録されていて、コレクションの全貌を伺い知ることができます。
ここでそれらすべてをご紹介することはできませんが、当サイト所蔵浮世絵の中から、そのゴッホの貴重なコレクションと同一のものをほんの僅かではありますがご紹介したいと思います。

ゴッホ美術館図録「ゴッホのユートピア 日本」

ゴッホ美術館図録「ゴッホのユートピア 日本」

今様押絵鏡/梅の由兵衛

imayo oshie-kagami / Ume no Yoshibei / Utagawa Toyokuni III / oban nishiki-e
歌川豊国(三代)/大判錦絵/安政6年(1859)/松林堂 (当サイト所蔵)
今様押絵鏡/梅の由兵衛

浮世絵ではたまに、複数の絵師が共同で一枚の浮世絵を描いたりすることがあります(いまでいうコラボレートですね)。
それを知ったゴッホは「自分もぜひ仲間たちと共同制作してみたい!」と、アルルのアトリエにゴーギャンたちを招いて共同生活を始めます。
しかし結局この試みは失敗に終わり、ゴーギャンとトラブルになったゴッホは激昂して発作的に自分の耳を切り落とすという奇行に出ます。
もうすでにこの頃から精神を病んでいたのかもしれません。
で、その「耳切り事件」の直後に耳に包帯を巻いた一枚のポートレートを描くのですが、その絵の元となったのがこの「梅の由兵衛」だと言われています。

Self-portrait with a Japanese print

梅の由兵衛は、歌舞伎では少々血の気の多い人物として描かれる侠客です。もとは武士でしたが、あるとき血気にはやって大立ち回りを演じ、そのため主家を追われることになります。
頭巾を被っているのは「許されて再びこの家に戻るまでずっと被っているように」との主人の言いつけを忠実に守っているためで、つまり由兵衛の反省の心情と「二度と問題は起こしません」という誓いの気持ちを示しているわけです。
「激昂する」→「問題を起こす」→「頭巾をかぶって反省」という由兵衛の行動が、なんだかゴッホのそれと重なりますね。
由兵衛の絵を真似た自画像を描くことで、ゴッホも反省の念を絵で表したかったのかもしれません。

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