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更名所作三番叟

歌川豊国(三代)画/万延元年(1860)/大判錦絵/恵比寿屋庄七 (当サイト所蔵)
更名所作三番叟

歌舞伎の顔見世で祝儀として演じられるものを三番叟といいます。踊りはこっけいですが、もとは能から発祥した格式あるおめでたい儀式用のもので、いつしか歌舞伎にも定着し、歌舞伎らしいアレンジが加えられていろんなバリエーションが誕生しました。
これはその中でも「舌出し三番叟」と呼ばれる、踊りの途中で舌を出すタイプのものを描いています。
ユーモラスな表情から戯画として見ることもできますが、私はそれよりも凧のような形で三番叟がトリミングされていたり、背景に将棋の駒が飛び交っていたり、福良雀を幾何学的に配置していたりするそのデザイン的な面白さの方に惹かれました。

また、この手の絵は、当時は縁起ものとしても使われていたようです。
出久根達郎の時代小説「波のり舟の」の中で、小さく折りたたんだ舌出し三番叟の版画を手渡す、という場面が描かれていますが、私が持っているこの浮世絵も、もしかしたら同じような使われ方をしたのでしょうか、小さく折りたたまれていたことを伺わせる折り目が残っています。
コレクターは概して美品、完品を求める傾向がありますが、状態ばかりを気にするのではなく、こういった折り目や手擦れから当時に思いを馳せるという骨董的な楽しみ方もあってよいのではないでしょうか。

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